ラーメン構造という建築の方法をご存知ですか?ラーメン構造は、重量鉄骨造の一つで、建築用コンテナハウスにも採用されている構法です。この記事では、ラーメン構造の特徴や他の構造との違い、耐震性について詳しく説明していきます。
目次
ラーメン構造とは
ラーメン構造とは、建築物の構造形式のひとつです。剛接合という接合方法を用いて立体的な格子状(長方形)の骨組みを作り、そこに壁や床を張っていきます。重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建築物でよく採用されている構造です。
ラーメンというと食べ物を想像してしまいますが、ここでいう「ラーメン(Rahmen)」は、ドイツ語で「枠」や「額縁」という意味です。
部材はH形鋼などを使用
ラーメン構造の柱や梁として用いられる重量鉄骨は、H形鋼(梁)や角形鋼管(柱)などです。溶接は事前に工場で行われ、接合済みの部材が建設工事現場に運ばれ取り付けられます。
柱の寸法は300mm~900mm程度
一般的なラーメン構造の建築物の柱の寸法は、300mm角~900mm角です。300mm角=「300mm×300mmの寸法の角材」という意味です。
ラーメン構造のメリット
強度が高い
ラーメン構造は、梁と柱を溶接して剛接合して作るため、高い強度を有します。剛接合とは、横から力が加わっても接合部分が変形しない強固な接合方法のことです。部材が変形してしまっても接合部分は変形することがないため強度が高い接合方法になります。
部材同士が一体化するように工場では溶接接合、現場では高力ボルト接合が行われます。剛接合について種類や詳しい説明は下の記事で解説しています。
このためラーメン構造の場合は一部が破壊されても力の再分配が行われ、部材が曲がるだけで構造自体が崩壊してしまうことはありません。ただしラーメン構造も、よほど多くの箇所が破壊された場合には崩壊に至ります。
開口部や間取りの自由度が高い
ラーメン構造のメリットとして大きいのは、間仕切りのない広い空間を作ることができる点です。ラーメン構造は柱や梁などの「枠」だけで建築物を支える構造のため、筋交い(柱や梁に対して斜めに交差させて取り付けられた部材)や耐震壁が不要になります。構造に影響しない壁を自由に取り外しできるため、他の構造に比べてデザインの自由度が高く、間取りの変更も容易です。
また筋交いが必要なくなることで、壁が必要なくなると同時に、建物の様々な場所に自由に開口部を設置することができます。
様々な建築物に幅広く対応できる
ラーメン構造は、その性質から、低層から高層まで幅広く対応することができます。実際に高層マンションに採用されていることも多いです。また、鉄筋コンクリートや鉄骨造、さらに近年では木造にもラーメン構造が実現できるようになりました。
ラーメン構造のデメリット
柱のサイズが大きくなる
ラーメン構造では、接合部が変形しないほどの強度を生み出すために非常に頑丈で太い柱と梁が必要になります。その柱や梁が室内に突き出すため、柱が邪魔になったり、凹凸によって家具の配置が綺麗にできないこともあります。
ラーメン構造では、構造を生かした内装やインテリアにするのもポイントです。
ラーメン構造と他の構造の違い
壁式構造
ラーメン構造と比較されるのが「壁式構造」です。ラーメン構造が枠組みで支えるのに対して、壁式構造は「壁」で建物を支える構造です。5階以下の低中層階のマンションなどによく使われる構造で、ラーメン構造よりも耐震性に優れますが、開口部やインテリアの自由度はラーメン構造に劣ります。防音や断熱の性能には差はありません。
ブレース構造
軽量鉄骨造の低層住宅などでよく採用されるのが「ブレース構造」です。ブレース構造もラーメン構造と同様に梁と柱で枠組みを作りますが、枠そのものに強度を持たせるのではなく、斜め材を使って構造を補強します。強度について一概には言えませんが、コストはラーメン構造よりも安くなることが多いようです。
構造 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
ラーメン | 強固な柱と梁 | 広い空間・自由な開口部 | 柱と梁が大きい |
壁式 | 壁で支える | 凹凸のない空間・耐震性 | 間取りの自由度が低い |
ブレース | 柱と梁+斜め材 | 水平方向の力に強い・ローコスト | 斜め材の掛け方に制約 |
ラーメン構造の耐震性について
耐震性が高いのは壁式構造であると述べてきましたが、ラーメン構造の耐震性が低いかというと、そういうわけではありません。ラーメン構造は十分な強度のある構造であり、実際に建築物を建てるときには、構造だけでなく地盤の状態や様々な状態を加味して設計します。
地震発生時の被害の大きさは、構造によって決まるわけではなく、建物の「耐震強度」と「地盤」によって決まります。全ての条件を加味した上で、最も適した構造を選んでください。
ラーメン構造の採用例
国立西洋美術館
ラーメン構造の建築物で有名なのは、世界遺産でもある「国立西洋美術館」です。20世紀建築界の巨匠、ル・コルビュジエ(1887~1965)が設計した、日本で唯一のコルビュジエ建築です。館内はたくさんの円柱で支えられている一方で、展示部分は壁がない大きな空間となっています。開口部を自由に作れるラーメン構造の特徴を活かした広い展示空間です。
トヨタホーム「パワースケルトン」
さらに一般的な住宅建築の例として、トヨタホームの独自のラーメン構造をご紹介したいと思います。トヨタホームが用いる「パワースケルトン」という独自のラーメン構造にも、溶接で接合部分を一体化させる剛接合が必要不可欠です。
トヨタホームのラーメン構造では、一辺が125㎜・厚み3.2mmで中が空洞になっている中空構造を用いています。一般的な寸法に比べると細いと思うかもしれませんが、1本の鉄骨柱では18.2トンの力に耐えることができます。パワースケルトンで用いられている鉄骨柱は業界トップクラスの125mm角と言われています。
コンテナハウスの構造はラーメン構造
コンテナハウスはラーメン構造の特徴を活かした重量鉄骨造の建築物です。ただし、必ずしもラーメン構造だけが用いられるとは限りません。建築用コンテナをいくつか組み合わせた設計にする場合は、ピンブレース構造といったラーメン構造以外の構造も必要になることがあります。