建築用コンテナは非常に強固な構造物なので、地盤が原因でなければ倒壊するようなことはなく、上からの荷重でペシャンコになってしまうということもありません。
しかしコンテナの屋根は基本的には「陸屋根」といわれる平たい屋根。これに対して積雪の心配の相談をいただくことがあります。そのような地域にコンテナハウスを建てる場合、どのような構造にすれば良いのでしょうか?この記事では、冬場の雪国の住宅事情と、コンテナハウスの場合の積雪対策について解説します。
目次
雪国の住宅の積雪によるリスクは?倒壊や断熱について
雪の重さはどれくらい?
雪の重さを1立方メートル(1㎥)あたりで考えると、重量は以下の通りです。
- ふわふわな新雪 50kg~150kg / 1㎥
- 締まった雪 150~500kg / 1㎥
- ざらめの雪 300kg~500kg / 1㎥
ふわふわな雪とざらめ雪では異なりますが、最も軽い新雪であっても50~150kgの重さになります。一度溶けた雪が再び凍ると「ざらめ雪」となり、新雪の3~5倍の重さになります。
例えば60㎡の屋根に1㎥あたり300kg積雪したとすると18トン、500kgであれば30トンにもなってしまいます。このように雪の塊は想像以上の重さであり、積雪地域において雪下ろしなどの対策を行うことは非常に重要です。
屋根の倒壊、断熱性能の低下、凍結のリスク
相当な重量の雪が積もる地域において、住宅が受ける影響としては次のことが考えられます。
- 冷気による寒さ
- 雪の重みによる屋根の倒壊
- 水の凍害
単純な寒さだけでなく、冷気による水道管の凍結、雪の重みによる屋根の倒壊、落雪による事故や開口部の封鎖などのリスクがあるため、寒冷地では昔から住まいに様々な雪対策がなされています。
雪国の住まいの工夫
【屋根】雪が落ちやすくなる工夫
雪国の屋根は「勾配屋根」を使い、斜めになっていることが多いです。このような住まいを「落雪式住宅」といい、雪が勝手に地面に滑り落ち、荷重を減らすことができます。また、近年では融雪式住宅も増えています。屋根に勾配をつけるだけでなく、屋根の下に不凍液や温水、ヒーターを敷いて雪が溶けやすいような工夫を施した住宅です。
【玄関・窓】開口部を二重にする工夫
雪国の住まいでは、二重窓や雪囲いを設置します。二重窓、二重玄関によってガラスとガラスの間に空気の層が作られ、室内に冷気が伝わりづらくなります。また、積雪によって出入り口が塞がれることのないよう、複数の出入り口を設置することもあります。夏場はすべての出入り口が使用できますが、冬場は積雪の影響を受けづらい出入り口を使うようにします。
【壁・ガラス】寒冷地用断熱材の使用
冬の寒さが厳しい地域では、建物の断熱性能が重要になってきます。二重窓などの対策に加えて、寒冷地用の断熱材や高断熱のペアガラスサッシなどが標準仕様となることが多いです。
コンテナハウスは雪国にも設置可能?
結論から申し上げますと、コンテナハウスは雪国でも十分に設置が可能です。
コンテナハウスはそのまま使うと屋根が平らなので雪国には向かないと思われがちですが、陸屋根のままでもかなりの強度がありますので、雪がなかなか溶けない豪雪地帯のような場所でなければ、構造上は陸屋根で使用することが可能です。たとえば、北海道ニセコ町の例では陸屋根のまま使用しています。
ただし天井面積が広くなれば考えなくてはいけないこともあり、状況によります。数十トンという積雪が続けばどこかが歪んだり、歪むことによる破損が起こる可能性がないわけではありません。
その場合、もちろん、勾配屋根での対応も可能です。勾配屋根はコンテナを斜めにカットして作ったり、デザイン上もコンテナハウスに馴染む形でのご提案が可能です。コンテナハウスは構造上自由に開口部を設置できるため、複数の出入り口を設置することも可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。
【岩手】雪国にコンテナハウスを設置した事例
弊社が施工を行なった岩手県のコンテナハウスは、勾配屋根を使用しています。屋根部分もコンテナでお作りしており、天井高を確保しながら積雪対策を実現しました。
勾配屋根の設置時の注意点
積雪対策の中でも主要な勾配屋根について、設置時にはいくつかの注意点があります。
足場の確保が難しくなることがある
勾配をつけすぎると屋根の上に立つことができず、メンテナンス性が下がってしまいます。こうしたバランスも重要になります。建築を行う地区の積雪量に合わせて雪荷重を考え、メンテナンス性を保った斜度を設定します。
落雪場所の確保
落雪する場所が安全な場所か、十分雪が下ろせるだけの場所が取れているかも大切です。落雪時に窓やドアが埋まってしまわないか、また近隣に余計な迷惑がかからないように配慮したり、人が通る場所へ落ちないような配慮も必要です。
日の当たる角度
積雪では日の当たる角度も重要です。日が当たる側の屋根だけが溶けて、日が当たらない側は積もりっぱなしということも起きるため、角度の計算は非常に大切な要素です。
雪と屋根の関係は非常に難しいが、地域に合わせた設計が可能
地区、積雪量、建築材料、希望の建築物から設計を考えていく必要があります。
陸屋根でも雪を溶かす設備があり、うまく屋根から雪を除去する設備もあります。こうすると勾配屋根で雪を落とす際の危険性を避けることができます。除雪には設計だけでなく設備で対応できることもありますので、合わせて建築することも可能です。
しかしその設備分の工費が上がってしまい、大がかりな設備では設計から考えなくてはならず、設計費も上がってしまう場合もありますので、自分にとって何が大切かを考えて取捨選択していく必要があります。
積雪に関してはその土地に合わせて大丈夫なように設計することはもちろん可能ですので、建築予定場所が決まっていましたらご相談ください。