中古コンテナを安く買って建築物として使いたいと考えている人は多いかもしれません。しかし残念ながら建築基準法でISO海洋輸送用コンテナの建築物としての転用は難しくなってきました。
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ISO海洋輸送用コンテナはそのままでは建築確認申請は通らない
ISO海洋輸送用コンテナをコンテナハウスに使いたいと考えている方は多いかもしれません。しかし、
でも紹介した通り、ISO海洋輸送用コンテナはJIS鋼ではなく、JIS認定工場で溶接されたものでもありません。
建築基準法に則ったものではないISO海洋輸送用コンテナを建築に使って建築確認申請を通すためには、「主要構造体にコンテナは関与していない」状態とすることが必要です。これは主要構造体は別に作り、その中にコンテナを入れるというもの。ただし構造体を作る費用がかかるため、建築用コンテナを使った方が安く済むことが多くなってしまいます。
コンテナハウスはグレーな世界だった
コンテナが世界標準になり、量産化されたことでローコスト低価格で造れるようになった
コンテナハウスはISO海洋輸送用コンテナから始まりました。ISO海洋輸送用コンテナは荷物満載で何重にも重ねられ、熱さも寒さも乗り越え、世界中を行ったり来たりするほど頑丈なものです。
今日につながる海洋コンテナは陸運業者を創業したマルコムマクリーンで、1956年のアメリカ最初のコンテナ専用貨物船「Ideal-X」のコンテナと言われています。このコンテナが後に世界標準となっていきました。このコンテナはトラックの荷台にもなり、海運でもそのまま運ぶことができ、陸に降りている時は倉庫としても使える非常に優れたもので、世界標準になるのに時間はかかりませんでした。
コンテナが世界中で次々と量産されるようになったおかげで、非常にローコスト低価格で造れるようになりました。結果的に建築物としての倉庫を作るよりもずっと安くなりました。
倉庫よりも安いコンテナを倉庫として使う流れ
当然倉庫よりもコンテナの方が安いとなれば、コンテナを倉庫代わりに使おうと考える人は増えていきます。
同時に世界中で量産され始めたコンテナは常に海外を行き来しているので、傷や凹み、穴など補修が必要になるコンテナも増えていきました。
そうなればコンテナの修理屋さんが増えてくるのは必然の流れです。コンテナの補修技術があがればあがるほど、「改造して倉庫にしてみよう」「部屋にできるんじゃないか」と考える人は増えていきます。
こうして建築物の倉庫を作るよりも安いとなれば、コンテナで倉庫を作って欲しい人も増えていき、ISO海洋輸送用コンテナのコンテナ倉庫、コンテナルーム、コンテナハウスが増えていきました。
1950年5月建築基準法制定
1950年5月。国民の生命、健康、財産の保護を図り、建築基準法が制定されました。しかしこの時点ではまだ実効的ではなく、形だけのような部分も少なからずありましたが、1970年に大幅に改正し、違反是正措置の強化、建築物集団基準の整備が行われました。
建築基準法は年々その時々の事情に合わせて改正が繰り返されてきましたが、コンテナハウスを作っているのはコンテナの修理屋さんです。もちろん建築基準法を知らず、守られることもありません。ユーザーもコンテナハウスを作りたいという希望の元でコンテナ屋さんに相談しているのですから、コンテナ屋さんが大丈夫といえば信じて疑わずに作ってしまいます。
コンテナは物流に使われている時は建築物ではないという点もグレーゾーンに拍車をかけました。固定して使えば建築物になりますが、物流で使っている箱だから建築物ではないという認識も強かったのかもしれません。また、自分の土地にコンテナを置いて好きに使っているのだから問題ないという考え方もありました。
国土交通省からコンテナを利用した建築物の取扱いについて発表
しかし法律からみれば、固定して使われたら立派な建築物です。建築物となればラーメン構造にし、JIS鋼を使い、JIS認定工場で溶接を行わなくてはいけません。
それであっても使われていたISO海洋輸送用コンテナですが、2004年12月に国土交通省が「コンテナを利用した建築物の取扱いについて(外部サイト)」を発表しました。こうしてコンテナを利用した建築物は検査されるようになり、建築基準法に基づいて確認済証の交付を受けなければ設置できなくなりました。
更に2014年にはコンテナを利用した建築物に係る違反対策の徹底について(外部サイトPDFファイル)を発表し、違反対策の強化にも乗り出しました。今後確認済証のないコンテナを利用した建築(コンテナハウス)は違反建築物として扱われ、是正指導を徹底されることになります。
実際に是正勧告を行い、使用禁止、撤去まで行っています。
ISO海洋輸送用コンテナハウスは実質不可能になりました
こうしてISO海洋輸送用コンテナは建築物への転用は実質不可能になりました。
今後コンテナハウスを作ろうとした場合には建築用コンテナでしか作るか、中古コンテナに構造体を付け加えて作る方法となります。
今後は値段だけでISO海洋輸送用コンテナを使って倉庫や家を作っちゃおう!という考えは通用せず、建築用コンテナのデザイン、施工の早さ、移動性、堅牢性、価格に魅力を感じた人だけが作れるものとなりました。