都会のオフィス街に並ぶ高層ビル。その多くに使われているのが「カーテンウォール」と呼ばれる透明な外壁です。カーテンウォールは見た目が透明なため、窓ガラスだと思われることがありますが、窓ではなく「外壁」になります。
この記事では、カーテンウォールの特徴や種類、施工方法について解説していきます。
目次
カーテンウォールとは
カーテンウォール(curtain wall)とは、建物の柱や梁(はり)、屋根などができてから取り付ける外壁のことです。後から取り付けるため、建築物の荷重を直接負担しません。そして、地震や台風の外力にも強い耐久性を誇ります。カーテンウォールを使用している場合、建築物の荷重を壁が負担しないので、主に柱・梁・屋根などで支えることになります。
カーテンウォールは製造から仕上げまでを工場で行い、取付金物であるファスナーを用いて、建築物に取り付けられます。取り付けの際はクレーンを使うため、足場を組む必要がありません。耐久性が高く、クレーンを使う取り付け方法から、高層ビルなどで使用されることが多いです。
カーテンウォールの特徴
カーテンウォールの特徴は、主に以下の4つです。
- 建築物の軽量化
- 耐久力が高い
- 足場を組む必要がなく建築しやすい
- デザインの自由度が高い
建築物の軽量化
カーテンウォールを使用すると、建築物の荷重を柱・梁(はり)・屋根で支えることになります。そのため、外壁は骨組みに吊るしたり貼り付けたりするだけで、頑丈にする必要はありません。外壁が軽くなるということは、建物全体の重量を軽くできるため、建物自体への負担をかけずに済みます。
地震や台風に強い
カーテンウォールは、地震や台風でかかる外力に強い構造です。たとえば地震で揺れた場合は、ガラスも揺れて地震の力を吸収する仕組みになっています。そのため、ガラスが飛散するリスクを、極力抑えることが可能です。
足場設置のコストを削減
カーテンウォールは主にクレーンを使い、取付金物のファスナーを用いて建築物に取り付けられます。そのため外壁工事の際は、建物の周囲に足場を組む必要がなく、建築がしやすいです。足場設置のコストを削減でき、工期を短くすることができます。
デザインの自由度が高い
カーテンウォールの場合、たとえば開口部を大きく採ることができるなど、デザインの自由度を高くすることが可能です。
また、後述の「カーテンウォールの種類」でも解説しますが、素材もスチールやアルミニウム、ステンレスなどがあり、個性豊かな設計を可能にしています。そして、カーテンウォールの組み方や素材を工夫することで、遮光性や省エネ性などの機能面の向上も期待できます。
カーテンウォールの種類
カーテンウォールは材質上の種類として、金属系の「メタルカーテンウォール」と、コンクリート系の「PCカーテンウォール」の2種類に大きく分けられます。
メタルカーテンウォール
メタルカーテンウォールとは、金属フレームとパネルで作られたカーテンウォールです。金属フレームにはスチールやアルミニウム、ステンレスなどが使用されます。高層ビルやマンションにおいて、建築物の軽量化や、災害で起こるガラスの飛散防止を目的として開発されました。
以下が、メタルカーテンウォールの主な種類になります。
- アルミパネル
- アルミ+ガラス
- アルミキャスト
- ハニカムアルミパネル
- チタンパネル
- セラミックパネル
PCカーテンウォール
PC(プレキャスト・コンクリート)カーテンウォールとは、工場であらかじめコンクリートを固めて製品にしたものです。コンクリートなので耐火、断熱、遮音などの諸性能に優れているのが特徴です。ただし、コンクリートは重量があるため一枚一枚が重くなり、メタルカーテンウォールと比べると軽量化には優れません。
カーテンウォールとサッシの違い
カーテンウォールとサッシの違いを表現するなら、サッシは「窓枠」のことで、カーテンウォールは「外壁」のことです。具体的に言うと、サッシとは窓枠として使用される建材のことで、窓の上枠・下枠・縦枠で構成された、窓枠と障子の框(かまち)を指します。対してカーテンウォールは、ほぼ全ての面がガラスやパネルと金属枠で施工されている、外壁のことを言います。
カーテンウォールの施工方法
大型のカーテンウォールパネルは、専用のタワークレーンにパネル設置用の器具(ファスナー)を取り付けて行います。
施工手順は、以下の流れです。
- クレーンに専用器具を取り付ける
- カーテンウォールパネルを器具に取り付ける
- クレーンで所定の位置まで吊り下げる
- 1次ファスナーと2次ファスナーを固定する
1次・2次ファスナーとは、躯体(骨組み)に取り付けるためにあるパネルの金具部分のことで、骨組みに近い方から番号で順序が設けられています。ファスナーは駆体にパネルを固定するだけでなく、パネルの変形や伸縮の吸収をする役割も担っています。
カーテンウォールの工法は5つ
カーテンウォールは、部材次第で様々なデザインや形状のものを作ることができます。また、工法を変えることでデザインの自由度を高めることも可能です。カーテンウォールには、主に5つの工法が存在します。
- マリオン方式(方立形式)
- パネル方式
- パネル組み合わせ方式
- 柱、梁(はり)カバー方式
- スパンドレル方式(腰壁形式)
マリオン方式(方立形式)
カーテンウォールの工法の主流のひとつが、マリオン方式です。マリオン方式とはマリオン(方立)と呼ばれる部材を、上下階の床か梁の間に掛け渡します。そこに、ガラスやスパンドレルパネルをはめ込んでいく工法です。垂直方向に部材を並べて構成していくので、柱型や柱カバーなどと称されることもあります。
パネル方式
マリオン方式と並んで、カーテンウォールの工法の主流のひとつが、パネル方式です。パネルを並べて壁面をつないでいく工法で、比較的簡単な作業で済みます。ただし、パネル同士のつなぎ目の処理が必要です。デザインの特徴として、パネルの中に窓を独立した形で設置します。
パネル組み合わせ方式
パネル組み合わせ方式とは、パネル同士を組み合わせて壁を形成します。パネル式と違うところは、パネルを組み合わせて壁を作った後、残った部分にガラスを入れて窓にする点です。
ガラスを含むメタルの窓枠をパネル同様に扱い、パネルの組み合わせだけでカーテンウォールを構成する方式もあります。この方式は、風圧などの力を流すなどのメリットがあり、台風による外力にも強いです。
柱、梁(はり)カバー方式
ビルの柱や梁を、包むようにパネルを組み合わせる工法です。柱型や梁型の複数の部材で面を構成するため、柱や梁が強調されます。
スパンドレル方式(腰壁形式)
梁の前部分と腰壁部分のみをパネルにし、パネルの上下にガラスを入れることで、窓が連なっているように見える工法です。水平方向に部材を並べて構成するので、「梁型」や「梁カバー」と呼ばれることもあります。
カーテンウォールについてのまとめ
カーテンウォールとは窓ガラスと言うよりも、あくまで「壁」です。
建築物の軽量化に繋がりながら、地震や台風にも強いため、多くの高層ビルで採用されています。また、工法もいくつか種類があるため、デザインの自由度が高いのも特徴です。